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岡山地方裁判所 平成2年(ワ)901号 判決 1992年1月13日

原告

岩野晶子

ほか三名

被告

岡本博文

主文

一  被告は原告岩野晶子に対し金一三〇万四一六七円及び内金一一八万四一六七円に対する平成三年一月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は原告岩野敏彦に対し金一〇万円、原告岩野涼に対し金五万円及び右各金員に対する平成三年一月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告岩野晶子、同岩野敏彦、同岩野涼のその余の請求及び原告岩野さやかの請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用はこれを四分し、その一を被告の、その余を原告らの各負担とする。

五  この判決第一、第二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は原告岩野晶子(以下「原告晶子」という)に対し金六八六万六二〇〇円及び内金六二六万六二〇〇円に対する平成三年一月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は原告岩野敏彦(以下「原告敏彦」という)に対し金三〇万円、原告岩野涼、同岩野さやかに対し各金一〇万円及びこれらに対する平成三年一月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、普通乗用自動車に側面衝突された自動車の運転者及び同乗者が、右普通乗用自動車の運転者に対し、民法七〇九条、自賠法三条に基づき損害賠償を請求した事件であるが、うち同乗者の二人と運転者は慰藉料のみを請求している。

一  争いのない事実

平成元年五月四日午後五時二〇分頃、岡山県赤磐郡吉井町塩木二九〇―一先県道上において、居眠り運転により道路中央線を越えて反対車線に進出して対向車に接触した被告運転の普通乗用自動車が、避譲停車中の原告敏彦運転、他の原告同乗の普通貨物自動車に側面衝突した。被告には居眠り運転、安全運転義務違反の過失があり、また被告は右普通乗用自動車の保有者である。原告晶子は被告から二三万円の支払いを受けた。

二  争点

被告は原告晶子の後遺障害及び原告らの損害額を争つている。

第三争点に対する判断

一  原告晶子の損害(請求額六二六万六二〇〇円)

1  入院雑費 一万一〇〇〇円

証拠(甲九)によれば原告晶子は本件事故により一一日間入院したことが認められ、入院雑費は一日当たり一〇〇〇円と認めるのが相当であるから、その一一日分

2  通院交通費 二万六四〇〇円

証拠(甲三の3、4、九、一〇、原告晶子)によれば、原告晶子は平成元年五月一五日から同年六月五日まで(実治療日数二日)国立岡山病院に、同月六日から症状固定日である同年一一月二〇日まで(実治療日数四四日)セントラル・シテイ病院に通院したが、本件事故による傷害(左膝部挫創)のため膝が痛く同年六月二二日まで合計一二日間はタクシーを利用し、その後は自家用車を運転して通院したこと、タクシー代は往復二二〇〇円を下らないことが認められ、同原告の症状からタクシー利用もやむを得ないと認められるから、右二二〇〇円の一二日分

3  休業損害 二七万六七六七円

証拠(甲一、九、一〇、原告晶子、同敏彦)によれば、原告晶子は本件事故により頭部切創、左膝挫創、両上下肢打撲、頸部捻挫の傷害を負つたこと、国立岡山病院退院時には軽度の右上肢、両足底のしびれ感、頭痛が認められたが、セントラル・シテイ病院通院中に頸部の痛みと運動制限はほぼ改善したこと、同原告は専業主婦であるが、退院後膝の痛みのため家事が完全に出来ず、特に掃除が困難で、妹や夫である原告敏彦の援助を受けていたこと、原告晶子は同年九月頃から人の手を借りずに家事が出来るようになつたことが認められる。

右認定の原告晶子の症状、仕事の内容、通院状況を併せ考えると、本件事故と相当因果関係のある同原告の労働力喪失の割合は、入院期間(一一日)についは一〇〇パーセント、それ以外の期間(同年八月末までの一〇九日)については三〇パーセントと認めるのが相当である。本件事故当時同原告は三四歳であつたから、平成元年度の賃金センサス女子労働者の平均月収入は一九万円と認められるから、これに基づいて計算すると、休業損害は二七万六七六七円となる。

190,000×11/30+190,000×109/30×0.3≒276,767

4  後遺障害による逸失利益

原告らは、原告晶子に一二級一二、一四号相当の後遺障害がある旨主張するが、証拠(甲一、二、九、一〇、乙四ないし一一、二九、原告晶子)によれば、同原告は現在左膝の右側部分に長さ約八センチメートルの症痕が残つており、両手指と両足底にしびれ感があること、しかし同原告の症状には、神経的或は他覚的異常は認められず、後遺障害の事前認定で非該当となつたことが認められ、かかる同原告の症状からすると、同原告にその主張の後遺障害があるとは認められない。しかしながら、右事実は慰藉料の算定において考慮することとする。

5  慰藉料 一一〇万円

原告晶子の現在の症状、左膝の症痕、入通院の日数、傷害の程度等諸般の事情を考慮すると、一一〇万円が相当である。

6  損害の填補

原告晶子が損害の填補として受領した二三万円を控除すると、被告が同原告に対して賠償すべき損害額は一一八万四一六七円となる。

7  弁護士費用 一二万円

本件事案の内容、認容額等諸般の事情を考慮すると、弁護士費用として一二万円を認めるのが相当である。

二  原告敏彦の損害(請求額三〇万円)

証拠(乙二、三、二五の1、2、原告敏彦)によれば、同原告は教師であるところ、本件事故により左手切創の傷害を負い、事故当日通院治療を受け、その後項部痛で一日間通院治療を受けたこと、原告晶子の傷害による炊事、育児等の負担増のため学校業務処理に支障を来たしたことが認められ、かかる事情を併せ考えると、同原告の慰藉料として一〇万円を認めるのが相当である。

三  原告涼、同さやかの損害(請求額各一〇万円)

証拠(乙一、五、原告晶子)によれば、本件事故当時原告涼は七歳、同さやかは五歳であり、原告敏彦運転の車の後部座席に同乗していたこと、原告涼及びさやかは本件事故により母晶子が死んだと思つて泣き叫び、原告涼はこの精神的打撃から夜驚症が再発したことが認められ、かかる事情を考慮すると、原告涼の慰藉料として五万円を認めるのが相当である。また原告さやかについては金銭で慰藉すべき精神的損害があつたとは認められない。

四  結論

以上のとおり、原告晶子、同敏彦、同涼の請求は前記限度で正当であるのでこれを認容し、同原告らのその余の請求及び原告さやかの請求は失当であるのでこれを棄却する。

(裁判官 將積良子)

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